昔話を考察する・その3

昔話とはちょっと違いますが、今回のお題は故事からです。
「人間万事塞翁が馬(じんかんばんじさいおうがうま)」と言う言葉をご存知ですか?
この故事の意味は後にして、その前にこの故事のお話を簡単にご紹介します。

昔、中国の北端のとりで(塞)のそばに老人(翁)が住んでいました。
この老人が飼っていた大切な馬が別の国に逃げてしまいました。
周りの人が「残念だったね。」「災難だったね。」と言うと、老人は「いや、これが幸運にならないとも限らない」と言いました。
しばらく経った後、逃げた馬が別の国のたいそう良い馬を連れて老人のもとに帰ってきました。
周りの人が「良かったね。」「1頭増えてラッキーだったね。」と言うと、老人は「これが禍(わざわい)にならないとも限らない」と言いました。
老人の息子が、連れて帰ってきた馬に乗った所、落馬して足に大怪我を負いました。
周りの人が「残念だったね。」「災難だったね。」と言うと、老人は「これが幸運にならないとも限らない」と言いました。
その後、戦争が始まりました。しかし、老人の息子は足の怪我のために多勢の死傷者を出した戦いに行かずに済みました。

周りの励ましや祝福に対する態度は「あまのじゃくなジーさん」と思わず突っ込んでしまいそうですが、確かに老人の言った通りになっていますね。
辞書で、この故事の意味を調べた所、「人生の禍福は転々として予測できないことのたとえ。(大辞泉)」とありました。
他にも、不幸と幸運は表裏一体とか、幸運も不幸も等しく訪れると言ったように、いろんな解釈が出来るなかなか味わい深い故事です。
個人的にこのお話を知った時、嫌な出来事やツイてない出来事、それだけを見て判断するのではなく、もっと大きなスパンで見る事が出来れば必要以上に落ち込んだり、辛い思いをしなくても済むのではないかと思いました。
そんな事・・・・なかなか出来ないですけどね。(^_^;)

また、水の流れのように淡々とした老人の態度は、いかにも中国の人々の理想っぽい感じもします。
中国には「一命二運三風水四積陰徳五唸書」と言う格言があります。
人生の指針を示しているような格言で、まずは天命(運命や宿命)、次に運、3番目は風水、4番目は陰徳(人に知られないようにひそかにする善行)を積む、最後に勉強の順番になっています。
天命や運が不変であったとしても、風水以降は自分の努力で変える事が出来ますね。
自分の人生が「不変な運命」であったとしても、自分の努力である程度克服可能だと言う、とても能動的かつ積極的な考え方が現れています。

石器時代に「今時の若者はなっとらん」と言うような内容が石に刻まれていたものが発見されているそうです。
私達の文明は進化しても「中身」は全然進歩していないのかも知れませんね。
長く受け継がれている話には、現代の私達にとっても学ぶべき事がたくさんあると思います。
みなさんも昔話に触れる機会があれば、是非味わってみては如何ですか。(^^)
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