みんなの前で・その2

多勢の前で何かを発表するとなると、その状況に馴れた人以外は誰しも緊張しましまいますよね。
私も高校生の頃、新入学生の前で部活の紹介をした時、無茶苦茶あがってしまい何を話したのか全然覚えていませんでした。(^_^;)
誰もが多少なりとも感じる「失敗したら恥ずかしい」が、あがりや緊張の大きな要因です。

以前、あがり症を練習で克服したジャズピアニストの話をご紹介しました。(第47回「みんなの前で」)
あがり症は基本的には自分で克服できるものです。
しかし、中にはこんな事例もあります。

【事例1】
初対面の人だけでなく、担任の先生や親戚の叔父さん叔母さん等年上の人に会うと必ず緊張する。
【事例2】
会社で上司やお客さんにお茶を渡す時などいつも手が震えてしまうOL。
【事例3】
字を書いている所を人に見られてから、人前で字を書けなくなってしまった。
【事例4】
授業中、先生からの質問の答えが解っていても指されると緊張して答えられない高校生。
それが次第に辛くなり、学校を休みがちになってしまった。
【事例5】
電話の応対に緊張し、受話器を持つ手が汗でびっしょりになるOL。
仕事場で電話の音がなる度に、激しい動悸と不安を感じるため会社を辞めてしまった。

他に、人と一緒に食事をすると全く食べられなくなるとか、公衆トイレで用を足せない等。

これらの事例のように、激しい動悸や冷や汗を伴う程の緊張や激しい不安を感じる人もいます。
さらに「今度また同じような目に遭うのでは」と考えてしまい、次第にもっと大きな恐怖や激しい不安となっていきます。
そして、事例4や5のように恐怖の元を避けるようになります。
日々の生活に支障を来たす、程度を越えた緊張や不安を感じる場合、「社会不安障害(SAD)」(社会恐怖)の可能性があります。
以前「対人恐怖症」「赤面症」「スピーチ恐怖症」と呼ばれていたものを総合的に捉えた、精神疾患「不安障害」のひとつです。
国内のSAD患者数は推計300万人と言われています。

ご紹介した事例は、誰もがほんのちょっと「緊張」するような場面ですね。
極度の緊張や激しい不安や恐怖を感じる人も、その事を知っています。
ただ、その程度の差が病的だとは知りませんので、ひとりで悩み、辛い思いをしています。
さらに他人からは、「内気」「人見知り」「恥かしがり屋」「あがり症」「引っ込み思案」など性格的ものだと思われがちです。
酷い時には、引きこもりやニートになったり、うつ病やパニック障害に至ったり、不安を消そうとアルコールや薬物に依存する場合もあります。

社会不安障害は、精神科や神経科、心療内科、メンタルヘルスクリニックで診断出来ますし、適切な治療をすれば直る疾患です。
もし、ご紹介した内容に思い当たり、毎日不安を抱えている方は思い切って診断をされる事をお勧めします。
[1]週刊ココロコラム
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