鎧(よろい)

私達の心はデリケートで弱いため、それを守るために様々な心理的な防御システムがあります。
そのひとつが「プライド」です。
英単語のプライド(pride)は、誇り・自尊心・自負心・うぬぼれ・思い上がり・優越感・高慢・横柄・得意(な気持ち)などの意味があります。
心理的な防御システムの中でも、プライドは鎧(よろい)のような役割を持っていると考えると解りやすいでしょう。
その鎧は2種類あります。

ひとつは、弱い自分を他人に悟られる事を恐れるために身につけたプライドです。
そのプライドは何よりも頑なに守るためとても強固なものです。
しかし、プライドに見合うような内面を伴っていませんので、危うさやもろさを孕んでいます。
いわば硬くてもろい材質の鎧を、鍛えていない体にまとっているようなものと言えます。
動く時に「もろくて壊れないか」が気になる上、鍛えていない体なので自由に動けません。
もし戦いのさなかに味方とぶつかると、その硬さ故に味方も傷付ける可能性があります。
この鎧を先ほどのprideの意味から抜き出せば、「自尊心」や「うぬぼれ」や「高慢」にあたります。

硬くてもろい鎧をまとっている人の中には、その鎧の性質に気付いていない場合があります。
性格気質的な傾向は、強い自尊心を持ち、他からの干渉を排除し、他罰傾向が強いタイプです。
実際には、心の奥で鎧の性質を知っていても、表層意識がそれを打ち消すため気付かないのです。
また硬くてもろい鎧をまとっている人は、人に負けてはいけない、優位に立たなければいけない、優れていなくてはいけない、人に少しでも良く評価してもらわなくてはいけない、など日常のあらゆる場面において自分を良く見せるための演出にひたすら心を砕きます。
これでは自然な自分でいられないため、心に余裕がなくなりストレスが溜まってきますね。

もうひとつは、自分の努力で成し遂げた物事に対するゆるぎない自信から来るプライドです。
それまで出来なかった、あるいは到達出来なかった物事を成し遂げるには、時には順調に、時には様々な壁や障害にぶつかりもがき苦しみながら階段を上るかのように自分のものにして来た過程があります。
この過程はまるで熱っせられ冷やされ鍛錬される鋼(はがね)の工程のようです。
鍛錬された鋼は、しなやかでとても丈夫で強いものです。
そんな鎧を鍛えた体にまとっていれば自由に動けますし、味方を傷付ける事もまずありません。
この鎧を先ほどのprideの意味から抜き出せば「自負心」にあたります。
鍛錬された鋼の鎧をまとっている人は、自負心のない面は弱い事を知っているだけでなく、自分の力量を見抜き、ありのままの自分を肯定的に受け入れる傾向があります。

2つの鎧を紹介しましたが、実はほとんどの人が硬くてもろい鎧を身につけています。(^_^;)
人によって硬さ・もろさの程度に違いがありますし、2種類混合の人もいます。
鎧のもろさに気付いて、鍛錬する人もいます。
もし、今ストレスをいっぱい抱えている人は、自分の鎧の硬さや丈夫さを点検してみると、何か発見があるかも知れませんよ。
[1]週刊ココロコラム
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