二重拘束・その2

随分前ですが、サラリーマン川柳の中にこんな句がありました。
「無理をさせ 無理をするなと 無理を言う」
上司が無理難題を押し付けておきながら、無理するなとねぎらう言葉はとても矛盾していますね。(^_^;)
前回ご紹介したダブルバインドも日常で良く体験するものですが、今回ご紹介するダブルメッセージのダブルバインドもみなさん時々経験していると思います。

例・新入社員の先輩の会話
先輩「解らない事があったら何でも聞いてくださいね。」
新人「○○が解らないのですが・・・。」
先輩「それはこの資料に書いてあるでしょ。そんな事位で質問しないで。」
聞いていいよと言われたから質問したのに、質問を否定された新人は何か納得出来ない感情を持つでしょう。

例・恋人同士の会話
彼「明日の合コン、人数あわせでどんなに頼まれても絶対行くな。」
彼女「じゃ、明日一緒にいてよ。」
彼「それは無理。」

ダブルメッセージのダブルバインドとは、簡単に言えば最初のメッセージと次のメッセージが矛盾しており、なおかつメッセージを受けた側がそこから逃避出来ない状況を指します。
「行け」と言われるのにスカートのすそを踏んでいるようなものですから、身動きできませんよね。

親と幼い子供の場合、こんなケースが日常的に見かけられます。
甘えたい子供が親にくっついてきましたが、用事で忙しい最中の親は「あっちいってなさい。」と言いました。
子供は渋々離れ、退屈さを紛らすため少し遠くに離れてしまいました。
遠くにいる子供をみつけて、親が子供に「こんな所まで行っちゃ駄目でしょ!」と怒り連れ戻しました。
子供は言われた通り「あっち」に行ったのに、それを駄目と言われては混乱してしまいますね。
特に、社会のしくみや物の道理を知らない幼い子供は否定された理由が解りません。
結局何をしても駄目ならば、何も行動出来なくなります。
さらに、この状況は「何をしても怒られる→自分の事嫌いなんだ、愛されてないんだ、自分なんかいらない子なんだ」と受け取ってしまいがちです。
もちろん、どんなに怒られても幼い子は親から逃避する事は出来ませんね。
子供を自分の所有物のように思っている親や、子供に対して支配的な親はこのようなダブルバインドをいつも子供に向けています。
否定されつつも拘束され、いつも矛盾する2種類メッセージに翻弄されるため、酷い場合は統合失調症(精神分裂症)の発症要因になる可能性があると言われています。

このようなダブルメッセージのダブルバインドは、最初のメッセージと後のメッセージが何故矛盾するのかと言う理由をきちんと説明し、メッセージの受け手が理解する事で解消されます。
先の子供に対してならば「今忙しいからちょっとここで待っててね。」とか「危ないからお母さんの見える所にいてね。」と話し子供に理解してもらう。
新人と先輩の会話ならば「解らないことがあったらまず資料を読んでください。その上で解らない事は何でも聞いてくださいね。」と最初に言っておけば「それはこの資料に書いてあるでしょ」と言う言葉が矛盾になりませんね。

ここまでですと、ダブルバインドはかなりの悪者のように感じますが、なんとメンタルヘルス系の治療にダブルバインドは役立っています。
何をやっても否定されるのではなく、何をやっても肯定されるダブルバインドです。
例えば出来たらほめ、出来なかった場合もほめるられる状況を意図的に作り、どちらに転んでも「肯定」と言う体験をさせると言う感じです。
なんだか難しそうですが、どんな人でも「ほめると伸びる」そうですので自分なりに工夫してみては如何でしょうか。
[1]週刊ココロコラム
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