モラハラ・ハラハラ・その1

モラス・ハラスメント(moral harassment)と言う言葉があります。
マリー・フランス・イルゴイエンヌと言う精神科医が名付けた造語で、精神的な嫌がらせ(いじめ)の事を指します。
セクシャル・ハラスメントがセクハラと言われているようにモラス・ハラスメント「モラハラ」と呼ばれています。
ちなみに、体の接触などがなく主に言葉で行われるセクハラはモラハラに含まれます。
他には、パワー・ハラスメント(上司と部下と言った立場の上下関係を使った精神的な嫌がらせ)、直接的な暴力以外のドメスティック・バイオレンスなども含まれています。

モラハラが起るのは、主に家庭や学校、職場など限られた環境です。
対人関係や立場が決まっている、言わば閉鎖された空間の中で起るため外部に知られにくいものです。
特にパワー・ハラスメントの場合「指導」や「教育」との明確な振り分けが難しい場合もあります。
また、「精神的な嫌がらせ」は主に言葉と態度で対象に嫌がらせをするため、「言葉の暴力」とも言えるでしょう。
暴力を受ければ誰が見ても目に見える傷が残り事実関係が解りますが、言葉の暴力によって受ける心の傷は他人には見えませんし、言葉自体は後から事実関係を確かめる事が難しいものです。
さらに、精神的なダメージは人よって違いますので、同じ状況でも精神的な苦痛を感じない人もいれば耐えられない程苦痛に感じる人もいます。
逆に相手が悪意を持っていない場合もあるでしょう。
そのため、モラハラは暴力等に比べると大変曖昧で判断の難しい問題とも言えるでしょう。

また、モラハラを提唱したイルゴイエンヌ女史は「モラハラを起こしやすい人格」があると言っています。
具体的にはこんな感じです。

・何でもかんでも自分が一番。絶対優位でないと気がすまない
・自分が特別で優秀な人間だと思っていて常に賞賛を浴びたがる
・自分の事しか関心がなく、他人は自分のために利用する位にしか考えていない
・人に意見される事を極端に嫌がる
・自分の考えが全て正しく、他人に無条件で従わせようとする
・好意を持った他人にもちょっとした事で嫉妬する
・人に対していつもあら捜しをして批判や非難をする

これらは自己愛性人格障害の特徴ですが、この性質を持つタイプがモラハラの加害者になる傾向があると指摘しています。
常に自分が一番であるために相手をおとしめている訳ですが、それに対して意識された悪意がある事は少なく、自分が精神的な嫌がらせを行なっている自覚がほとんどありません。
ここにもモラハラの曖昧さが隠れています。

次回は、モラハラの具体的な部分に迫りたいと思います。
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