モラハラ・ハラハラ・その3

前回からの続きです。
読んでいない方は是非その1から読んで下さいね。

お局B子さんはバリバリ仕事をこなすキャリアウーマンで、周りの人も、仕事に対して厳しく教育熱心な面を評価し一目置いていました。
しかし、怒ると怖いのでなるべく逆らわない、または敵に回したくないと言う印象も持っていたようです。

B子さんから受け続ける攻撃は、A子さんに自責の念や自己嫌悪に罪悪感を抱かせました。
これらはとても強いストレスとなりますが、それ以上にいつも矛盾するB子さんのメッセージに翻弄される(ダブルバインド)ため心の余裕はさらになくなります。
誰かに助けてもらいたくても、根も葉もない噂が元で社内で孤立し親身になってくれる人がいません。
憂うつ、不安、恐怖、無価値感や無能感、孤独感、認めてもらえない感情、緊張がいつもA子さんの心を支配するようになったのです。
それらの感情が続くと精神的に耐えられないため、心の防御機能「抑圧」(押さえ込む/心の奥にしまって表面上は忘れた事にする)が働きます。
抑圧してもそれらの感情自体なくなりませんし、日々そんな感情を抱かされる訳ですから、強いストレスから次第に体調を崩すようになりました。

体調を崩して欠勤や遅刻・早退をすると、必ずB子さんが攻撃してきます。
さらに過剰なストレスのせいで集中力や判断力が低下し、仕事上のミスが多くなりました。ここもB子さんの攻撃ポイントです。
仕事上のミスや欠勤・遅刻・早退は事実ですから、B子さんが人前で責め立てても、周りの人がモラルハラスメントをしているとは思いません。
当のB子さんも、自分が「指導」していると思いこんでおり、意識的にいじめてやろうと思っていないため無自覚です。
そして恐ろしい事に、A子さんは「全て自分が悪い」とB子さんから思い込まされているため、モラルハラスメントを受けているとは思っていません。
このように、A子さんがモラルハラスメントを受けているにも関わらず、周りの人も当事者も自覚していないのです。

こんな感じで、モラハラはどんどんエスカレートしながら継続されていきます。
A子さんがいじめられている事を認識しても、社内の人達はそんな認識ありません。

あまりに辛い日々が続き、肉体的・精神的なダメージを受けたA子さんは親と相談して会社を辞める事にしました。
しかし引き継ぎの関係で3ヶ月は辞めさせてもらえません。
退社を聞きつけたB子さんから執拗な攻撃を受けましたが、それは明らかにエスカレートしたものになっていました。
あからさまな批判や嘲笑、無視、罵声は、さすがに周囲の人も行き過ぎだと思いましたが、今更B子さんを敵に回してまでもうすぐいなくなるA子さんの肩を持つ人はいませんでした。
A子さんはそれらの状況に対して次第に「人ごと」のように実感が湧かなくなり、与えられた仕事を無表情で機械的にこなすだけになっていました。

退社した直後のA子さんは、何に対しても興味も感情も湧かず、自分が実在するのかすら実感出来ない感覚になっていました。
しばらく家でのんびりしていたら、少しずつその感覚は薄れていきました。
1ヶ月程経った頃、なんとB子さんから電話がかかってきたのです。
声を聞いた途端、以前感じていた緊張感や恐怖感が鮮明に甦りました。
B子さんは「今度良かったら食事しましょう。あなた家にいるなら私が行ってもいいのよ。」と何事もなかったかのように話しました。
その一件以来、B子さんからまた電話がかかってくるのではないか、家に来るのではないか、外出すると会ってしまうのではないかと言った半ば強迫観念のような不安感・恐怖感を持つようになりました。
A子さんは恐怖から外出を一切しなくなり、部屋に鍵をかけて半引きこもり状態になったため、親御さんが心配して心療内科に連れて行きました。

退社して3年。A子さんはほぼ以前の日常生活を取り戻しましたが、未だに恐怖感から就職活動が出来ないままでいます。

次回に続きます。
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