謎は解けたが気分は複雑

いろんな方とお会いする機会が多いのですが、第146回「歯車」に書いた女性と同じようなタイプの方と時々出会います。
共通しているのは、返事がないか返事が遅い、例え話を額面どおり受け取る、絶望的に応用力・想像力がない、自分で自分の意見や意思、感情が解らない、空気が読めない、などです。(どんな感じかは「歯車」を読んで下さいね)
何故こんなタイプの人がいるのかとても不思議でずっと気になっていたのですが、つい最近ひょんな事から謎が解けました。

精神的な要因が元となり、体調を崩し病気になる事を「心身症」と言います。
例えば、ストレスが元で胃潰瘍になったり、自律神経失調症になったりと言った感じです。
この心身症の患者さんに接していた心理学者が、共通する性格傾向を見つけ「アレキシシミア(アレキシサイミア)」と名付けました。

日本では「失感情症」と呼びます。「症」とついているものの病気ではなく、個人の性格・気質(パーソナリティ)傾向です。
アレキシシミアの特徴は

・自分の内面へ眼を向けることが苦手
・自分の感情を気付きにくい
・自分の感情を言葉で表現することが難しい
・想像力や空想力が欠如している
・対人関係は機械的な対応が多くコミュニケーションがとりにくい
・他人との共感に対して無関心

感情そのものがない訳ではなく、自分の心の動きに気付きにくい傾向が強いのです。

アレキシシミアの方は、強いストレスにさらされ「心」は必死でSOSと叫んでもそれに気付かないため心身症になりやすいのです。
また、アレキシシミアの方は内面に対する関心が低下している分、現実世界に対する関心が強いです。
そのため、超現実的で社会的な適応が過剰なくらい良すぎる傾向があります。
仕事をテキパキこなす仕事中毒人間みたいなタイプが解りやすいでしょう。
しかし、自分も含めた人の心の動きが解らないため、対人関係は希薄で、配慮や空気を読む事も出来ません。
コミュニケーションそのものが上手くとれず、学校や会社などの場で孤立している傾向があります。
多くのアレキシシミアの方は社会での生きにくさを感じていたり、対人関係に悩みを持っている事でしょう。

アレキシシミアの性格傾向になる原因は、生育環境をはじめいろいろな要因があると言われています。
その中でも、アダルトチルドレン(第71〜72回「傷付いた子供の私」参照)と同様、虐待や放置、精神的な支配や条件付の愛情しか与えられない親の元で育つ等の、生育環境が大きな要因と言われています。

アレキシシミアの特徴は、私が疑問に思っていた「歯車」のタイプとぴったり重なります。
こんな(病理的)パーソナリティ傾向があると言う事で私の疑問は気持ち良く解明されました。
しかし、本人自身が望んだ性格傾向ではないでしょうし、形成された性格傾向が自分自身を苦しめている事を考えると、とても複雑な気持ちになりました。

※もし自分が、或いは身近な人がアレキシシミアの性格傾向を持っていると感じた方は、心理療法で改善できますのでメンタルヘルス系の病院やクリニック、心理カウンセラーなどに相談する事をお勧めします。
[1]週刊ココロコラム
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