ココロの鏡・その4

これまでの連載で「投影」が何かは、なんとなく解って来たのではないでしょうか。
もう少しお付き合い下さいね。

投影の恐ろしさのひとつは、自分が投影している事に気付かないと言う事です。
投影は他者の資質や行動や状況としか認識出来ないため、自分の本当の心に気付けません。
自分の感情の中にある(受け入れがたい)欲求や願望は、いつまでも成就する事はありませんので、恒常的な欲求不満を抱える事になります。
欲求不満は緊張やストレスの元となりますので、何もしなくても自らストレスを募らせていると言う訳です。

もうひとつ。本来、投影は自分の心を守るために行います。
投影をした当初は「他人事」になりますので心を保つ事が出来ますが、結局不快な感情が消える事はなく欲求不満も募ります。
そのため、さらに自分を守るために投影すると言った感じでどんどんエスカレートしていきます。
投影は無意識的なものですので、どんなにエスカレートしても自分自身で気付く事は難しいのです。

こうやって、自分の内面をどんどん「他人事」にしていくと、どうなるでしょう。
自分の本当の感情や思考、状況等を「ありのまま」に捉える事は到底出来なくなり、知らず知らずのうちに自分の身の回りには「不快な他者」がどんどん増えていきます。
ふと気付いた時には、自分の周りは「不満」だらけで不愉快極まりない状況となり、ストレス過多な日々を過ごしているはずです。
本当の自分や満たされない原因を自分自身で知らない限り、不愉快な生活は続いていきます。

投影しまくる人は「○○でなければいけない、△△してはいけない」と言う「制約」を心にたくさん持っている傾向があります。
物事に対して白黒(善悪)の線引きがはっきりしており(線はあくまでも自分で引いている)、自分は常に白(善)で「なければならない」と言う思考が非常に強いとも言えます。
このような人は、白(善)の形とほんの少しでも異なっている物事は黒(悪)と考えます。
しかし現実には寸分違わぬ白(善)の形などがいつもある訳ではなく、自分の中にある白(善)以外は全て受け入れがたい事象となり抑圧して投影してしまうのです。
白黒の線引きを緩めて、心の制約を少しずつなくしていけば投影そのものが少なくなっていきます。

そして、自分自身が投影している事に気付き、何の対象にどのような内容を投影しているかを考えれば、自分自身の心の「本音」が見えてきます。
その1で「私の場合はモタモタしている人や段取りの悪い人を見ると異常に腹が立ちイライラが表面に出てしまいます。」と私自身の事を書いています。
私はモタモタして段取りが悪い人なのですが、それを私自身が強く嫌悪している(自分の資質として受け入れたくない)からに他なりません。
また、子供の頃から親(気の短い関西人^_^;)に「さっさとしなさい」としょっちゅう叱られていたのも原因となっています。
今でも他人がモタモタしているとイラっとしますが、原因が解るようになってからはイライラを他人にぶつける事はしなくなりました。
このように、それが依然受け入れがたいものであっても原因が解ると不快感は軽減していくはずです。
それに伴い「○○のせいだ」と責める事も少なくなっていくでしょう。
自分の周りは不満ばっかりと思っている方、本当の自分を知りたい方は、自分自身の投影についてじっくり考えてみましょう。
傷口に塩を塗る場合がありますが(^_^;)、心の成長や充実した日々が得られるかも知れません。

最後に、投影は誰しも行う自然な心の動きですので、必ずしも「悪」ではありません。
また今回はネガティヴ面だけを紹介していますが、ポジティブな投影もあります。
その話はまた機会を見てご紹介したいと思います。
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