八方美人のホントの所・その1

八方美人とは本来「どこからみても難点のない美人」を差します。
転じて「誰に対しても如才(いい加減・手抜かり)がなく振舞う人」の意味合いとなりました。
八方美人さんは誰に対しても気さくで人当たりも愛想も良いですから、単純に考えれば他人から嫌われる理由が見当たりません。
しかし嫌われない反面、他人から好かれない傾向もあります。
それは何故なのでしょうか。

八方美人の印象は「誰に対しても調子が良い人」が挙げられます。
例えば、Aさんと一緒にいた時にAさんが「旅行は国内より海外旅行が楽しい。」と言えば八方美人さんはそれに同調します。
別の機会にBさんが「旅行は海外よりも温泉がほっこりする。」と言えば八方美人さんはそれに同調します。
AさんとBさんがこの事実を知れば、八方美人さんの事を「私の意見に賛同してくれた私の理解者」だと思っていたのに、意見の違う他人に対しても全く同じ態度を取っていた事で失望します。
そして、「人にいい顔したいために同調した調子の良い人」と思うでしょう。
誰しも「自分」と「その人」との特有な結び付き(交流)を求めますので、他人と同等の扱いや画一的な扱いをされると、とても不愉快な気持ちになるのです。

もうひとつは、「国内より海外旅行」「海外旅行より温泉」相反する意見どちらにも同調していますので、どちらが本音なのか或いは両方共本音なのかそうでないのかが解りません。
AさんBさんからすれば、八方美人さんの「本音」が見えず何を考えているのか解りませんので、「信頼出来ない人」と言う印象を持ってしまいます。
簡単な例で紹介しましたが、八方美人さんが他人から好かれない理由はこのように「誰とでも上手く合わせている」からなのです。

ちょっと待って。相手に合わせるのは協調性でしょ。協調性を持てと言われて育ってきたのにおかしくない?
と思われる方もいると思います。(^_^;)
協調性は「互いに協力し合う」「互いに力を合わせる」、つまり互いを尊重して協力し合う事です。
協調は自分の意見と相手の意見があってはじめて成り立つのですが、八方美人は一方的に相手に同調しているだけで「互い」を尊重しておらず協力し合ってもいません。
「互い」と強調してみましたが、八方美人さんが本当に尊重・協力していないのは相手ではなく「自分」なのです。
実はここに大きな問題が隠されています。

先日テレビを見ていたら外国人が「日本人のタテマエが解らない」と話していました。
日本人は慮る(おもんばかる)・察する文化があり、円滑な対人関係を保つために自分の意見(本音)よりも相手やその場を立てる(建前)気質があります。
言い換えれば、他の国に比べて「八方美人」度がとても高い国民気質ですから、この国で生活するには備わっていた方が良い資質なのかも知れません。
そう言う見方をすれば八方美人は必ずしも悪ではありませんね。

八方美人の中には、処世術として自覚した上で戦略的に振舞っている人もいますが、処世術でも戦略的でもなく、さらには自覚していない人が八方美人の大多数を占めるでしょう。
また、そんな八方美人さんの多くはどこかで辛い思いをしています。
次回はそのあたりを考察していこうと思います。
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