12の障害・その1

私の友人は、とある事情で日々とても忙しく、自分ひとりで精一杯やっているため心身ともに本当に大変そうです。
まわりからも「あなたが頑張らないと」とか「大変だろうけど頑張って」と良く言われるそうです。
その度に、こんなに頑張ってるのにもっと頑張らないといけないんだ、とか、精一杯やっててもまだ足りないんだ、と感じて自分の力不足を思い知らされる、とぽつりと本音を話してくれました。
考えてみると、一生懸命頑張っている人に「頑張れ」と言うのは、息を切らして全速力で走っている人に対して「もっと早く走れ」と言っているようなものなのかも知れませんね。

悲しい事に、私達が相手の事を思いやって口に出す言葉や態度の全てが、必ずしも相手にとって嬉しいものとは限りません。
先の友人のように、逆に辛い思いをする時もあるかも知れません。
それは逆の立場でも同様ですね。
友人が自分の事を思って言ってくれた事が解るからこそ、余計にその言葉が辛いと言う経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

1962年に、アメリカの心理学者トマス・ゴードン博士は、親子関係の改善と子どもの健やかな成長を実現する為のコミュニケーション教育プログラム「親業訓練(Parenting Effectiveness Training/P.E.T.)」を開発しました。
その中に「(コミュニケーションを阻む)12の障害」と言うものがあります。
親が子に対して行うと子どもの心に良くない影響を与える可能性がある応答として提示されているものですが、親子関係に限らず人のコミュニケーション全般にもあてはまるものです。
この12の障害を2回に分けてご紹介します。

1.命令・指示
何かをするように(或いはしないように)言う
例:「早く片付けなさい」「それはやめなさい」「この方法でやりなよ」
言われたら→黙らされて自分の意見が言えなくなる

2.注意・脅迫
それをすれば(或いはしないと)どんな結果になるかを言う
例:「宿題しないとゲーム没収するぞ」「そんな事したら後で絶対後悔するよ」
言われたら→反感や防衛心が生じやすい

3.訓戒・説教
何をすべきか(或いはすべきでないか)を言う
例:「○○ちゃんも出来たんだからあなたも出来て当たり前でしょう」「モテたいなら自分から話しかけるべきだよ」
言われたら→本人も判っている事を指摘されるので逆ギレなど反撃で防衛するしかなくなる

4.忠告・提案
どうしたら問題を解決するか助言や提案をする
例:「先生にお願いして順番を変えてもらえばいい」「君から謝ればきっと上手く行くよ」
言われたら→自発的に考える事がなくなり依存が生じやすい

5.講義・講釈
自分の意見等で相手の判断に影響を与える
例:「私はあなたのためを思って注意したり怒ったりしているのよ」「新人の時は大変だったけど今になって苦労して良かったよ」
言われたら→状況にもよるが批判、指摘、非難などに解釈されやすい

6.批判・非難
否定的な判断や評価を下す
例:「これ位で嫌なんて言うのはワガママでしょ」「何かあるとすぐ落ち込むのは良くないよ」
言われたら→自己評価が下がりコンプレックスを抱きやすくなる

残りは次回にご紹介します。
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