新型うつ病

ココロコラムの初期に、うつ病について取り上げています。(第48回「うつ病・その1」第49回「うつ病・その1」)
以前に比べ、精神科や心療内科に対する偏見や抵抗が少なくなったと言う意見もありますが、最近は有名なクリニックでは常に4時間待ちも珍しくない程、うつ病の方が増えているそうです。
その中でも、ここ数年で「新型」と言われるタイプの症状を訴える方が爆発的に増えていると言われています。

うつ病は「気分障害」の一種で、いくつかの種類に分類されており、典型的なうつ病は正式には「大うつ病性障害」と呼ばれています。
うつ病を発症しやすい傾向がある性格は、真面目で責任感が強く、協調性があり、対人関係でも気配りや誠実さを持ったタイプの方です。(メランコリー親和性性格)
うつ病になると、周りに対しての罪悪感や自分を責める気持ちに苛まされます。
そして、憂うつな気分や無気力感、集中力の低下、興味や喜びの著しい低下、不眠や疲労感をはじめとした様々な体調不良に悩まされます。

一方、新型うつ病は現在はっきりと定義されておらず、便宜上この名前を使われているに過ぎません。
新型うつ病は大うつ病性障害の症状や特徴とは異なる面があり、別に分類されている「ディスチミア親和型うつ病(気分変調性障害)」、「非定型うつ病」等が該当するのではないかと言われています。
他にも「自己愛性」「回避性」「抑うつ性」などの「パーソナリティ障害」や「擬態うつ病」「退却神経症」などの側面から新型うつ病を捉えようとする流れもあります。
今回はディスチミア親和型うつ病と非定型うつ病の特徴を紹介します。

■ディスチミア親和型うつ病(気分変調性障害)の特徴

・慢性的抑うつ状態が続くが大うつ病性障害より症状は軽度
・無気力、倦怠感がある一方、衝動的な自傷行為や自殺未遂をする場合がある
・規律や秩序に対して否定的で、集団との協調性は希薄なため、社会生活において過度なストレスを感じやすい
・自己愛が強く、他罰的で逃避的(回避的)な性格傾向の人が発症しやすいと言われている
・うつ病の診断や治療に協力的だが、うつ病状の存在に終始しがち
・薬が有効でない場合も多く、治療をしても部分的効果しか得られない傾向があり難治性が高い

■非定型うつ病の特徴

・主な症状は大うつ病性障害と同じだが、自分にとって好ましい事や都合の良い事があると気分が良くなる(気分の反応性)
・過食、過眠傾向がある
・疲労感と共に体の重さが見られる
・イライラして落ち着かない
・人間関係に過敏で攻撃的になるなど激しい反応をする傾向がある
・他人の顔色を伺い、他人の評価を気にするため、他者の意見で自己評価が左右される
・自己中心的で他人に対する要求が多い性格傾向の人が発症しやすいと言われている
・社会不安(対人恐怖)の傾向がある

新型うつ病の典型的なケースとして、仕事での挫折やストレスがきっかけとなり抑うつ状態となり、仕事となるとうつ病と同等の症状が出るが、好きな事をしている時にはそれらの症状は出ません。
また、自発的に精神科や心療内科を訪れ診断書を書いてもらい休職し、休職中は趣味や旅行などを楽しみ、復職となるとうつ病と同等の症状が現れると言ったケースもあります。

新型うつ病は、自分勝手で人格的に未熟な者、或いはそのようなタイプの人がかかる病気だ、と新たな偏見を持たれる可能性があります。
また、先のケースのように社会生活において周囲が対応に困る存在になっている場合もあり、さらに偏見を助長する恐れもあります。
現時点では、診断マニュアル「DSM」の定義と照らし合わせた結果、便宜上そう呼んでいるだけで、「新型うつ病」と言う病気はありません。
「新型うつ病」はマスコミによって一人歩きをはじめた感がありますが、病理として確定していない事だけは是非知って欲しいと思っています。
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