呼吸

随分前の話ですが、友人がとある病気にかかりました。
その病気は現代医学では発症原因が特定出来ませんが、几帳面で神経質な性格傾向を持った人や強いストレスや精神的・肉体的な疲労などの状態の人発症しやすいと言われています。
また、命に関わる事はなくても症状自体が大変不快なものであり、その症状がいつ起こるかがなかなか予測が出来ないそうです。
そのため、いつ症状が出るかと不安やストレスを感じて悪循環に陥ってしまう傾向があるそうです。
話を伺って、なんて大変なんだろうと思ったものでした。

それからしばらくして、その友人と再開した時に具合を聞くと、少しずつ良くなっていると明るく話てくれました。
お薬で改善されるらしいのですが、ある方法を勧められて取り入れた所、症状の改善以外にも思わぬ良さを実感したと力説してくれました。
その方法とは「腹式呼吸」です。
友人曰く、毎日腹式呼吸を続けていたら、精神的に楽になってストレスが溜まりにくくなった上に、くよくよ悩む事が少なくなり、なんとなく楽観的になってきたのだそうです。

普段、多くの人は胸で呼吸をする「胸式呼吸」をしています。胸式呼吸は肩が上がったり胸が少し広がる呼吸です。
ストレスでイライラしたり、不安やプレッシャーを感じた時は、胸式呼吸でも特に浅い呼吸になるため、体に十分な酸素を取り込む事が出来ません。
そのため、浅い呼吸を続けていると頭がボーっとしたり集中力が途切れる等が考えられます。
また、呼吸と自律神経は深い関係があるとも言われ、浅い呼吸は脳や自律神経に影響を及ぼし、さらにストレスとなる事が解っています。
心理的ストレスを受けている体の状態が呼吸に反映され、その呼吸がさらにストレスを強めると言う悪循環と陥る訳です。

一方、腹式呼吸は、眠っている時やリラックスしている時、あくびの時、深呼吸の時などに行う深い呼吸です。腹式呼吸は肩や胸ではなくお腹が動く呼吸です。
また演劇や歌などでは「安定した声」を出すために腹式呼吸は必要不可欠です。
腹式呼吸は横隔膜を動かすため、それにつれて内臓への内圧が変わり血液を循環させる働きがあります。
腹式呼吸を行えば血行が良くなり自律神経のバランスが整い、新陳代謝が活発になる等健康的な状態となりますし、酸素量が十分なため体だけではなく脳にとっても大変有益です。
さらに最近の研究で、腹式呼吸が主に精神を安定させる作用がある脳内の神経伝達物質「セロトニン」分泌量の増加を促す事が知られています。

胸式呼吸と腹式呼吸だけでこんなに違う状態になるとは驚きです。
赤ちゃんはみんな腹式呼吸をしているそうですが、成長するにつれて胸式になってしまうのは何故なのでしょうね。
普段、呼吸はほとんど無意識に行っていますので、それを胸式呼吸から腹式呼吸にする事は難しいですし、呼吸を意識しすぎて逆に苦しくなるかも知れません。
そのため、「意識的に腹式呼吸を行う機会」を作ると良いでしょう。

意識的に腹式呼吸を行うのに最適なのは深呼吸です。
緊張している時や気分転換で深呼吸を行う事がありますが、ゆったりとした深呼吸は自然と腹式呼吸になる傾向があります。
先の友人は確か、ゆっくりとした深呼吸を5分〜10分程度続け、それを1日2〜3回行っていると話していました。
深呼吸の際は、お腹を意識して下さい。難しい場合は、あくびをする要領を思い出すと感覚が掴みやすいかも知れません。
1回の呼吸(吸って・吐いて)は苦しくならない程度に大きく、なるべくゆっくり・ゆったりと行いましょう。

この深呼吸を毎日習慣にすれば、腹式呼吸の機会が増えます。
個人差はあるでしょうが1ヶ月真面目に続ければ、肉体的にも精神的にもポジティヴな変化が表れる事でしょう。
ストレスが溜まっている方や溜まりやすい方、悩みの多い方は、是非お仕事や勉強の合間、休憩時間、お休み前などの折にゆっくり深呼吸を習慣にしてみては如何でしょうか。

追伸:続けてみて何か変化があったら是非教えて下さいね。(^^)
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