自分探し・その4

エリクソンのライフサイクル理論の「青年期」には「アイデンティティ獲得」と言う課題がある事
そのために「モラトリアム」と言う猶予期間の中で精神的な試行錯誤を繰り返してアイデンティティの獲得をしていく事
アイデンティティの獲得が上手く出来なかった場合、アイデンティティ拡散と言う状態になる事
などをご紹介しましたが、ここからが本題です。(遅っ)
今回のコラムは私自身の個人的考察も含まれています。

そもそも、10代後半の人に「自分とは、人生の目的は、自分の役割は」と聞いて即答出来る人はどれ位いるでしょう。(^^;
17歳のプロゴルファー・石川遼くんのような存在の方が、圧倒的に少ないはずです。
先の概念は約半世紀前に提唱されたものですが、当時に比べ選択肢の広さと自由度は増しています。
それに伴ってか、昨今はモラトリアムの期間自体も長くなっていると言われ、ライフサイクル理論の「青年期」を30代位までとする流れもあるようです。
20代後半や30代になっても自分の役割や人生の方向性が見出せないのは、現代では特別な事ではないと言えるでしょう。

アイデンティティ獲得は青年期に「達成すべき」課題ですが、実際には、青年期から「取り組む」課題として捉える方が良いかも知れません。
例えば、子供の頃から野球が大好きで、将来プロ野球選手になる事が夢だったとします。
高校野球の強豪チームに入部し、努力の末レギュラーの座を射止めた時には、自分の役割や人生の目標や自分の方向性は明確です。
しかし、卒業後何年挑戦してもプロテストに合格しなかった時、プロになったとしても膝を壊して1年で引退した時はどうでしょう。
今まで明確だった自分の役割や目標、方向性が崩れ去る訳ですから、新たな方向性を模索しなくてはならなくなります。
この例と同様に、転職・失職、定年退職、結婚や出産、家族や伴侶との離別・死別等、今後いくつもやってくる「人生の岐路」によって、それまで獲得していたアイデンティティが崩壊し、年齢に関係なく新たな方向性を模索しなければならない時があるかも知れません。
生涯の中で、事あるごとに「自分とは、人生の目的は、自分の役割は」に対する答えを自ら模索し、その都度見つけ出すものと言えるでしょう。

自分探し・その1の冒頭で紹介したいくつかの言葉がありましたが、それらの言葉の中には「隠れているキーワード」があります。
キーワードを入れると「自分が『社会の中で』何をしたいのか解らない」「『社会の中で』私の生きている意味は何なのか」となります。
自分の役割や目的、目標、方向性と言うのは、『社会の中』での役割であり、目的、目標、方向性であると言えます。

『社会』とは「生活空間を共有したり、相互に結びついたり、影響を与えあったりしている人々のまとまり。また、その人々の相互の関係。或いは、同じ傾向・性質、あるいは目的をもつ人々のまとまり。」(大辞林)です。
つまり、人と人との相互関係や、いろんな人々の中での自分のかかわりにおいて「自分が何をしたいのか解らない」と言う事なのです。
学業や仕事にしても同様で、成績や能力自体よりも、人々から認められたり自分が役に立っていると感じられる方が、やりがいや力を発揮していると実感できる傾向があります。
また、スピリチュアル志向の方から、その1の冒頭で紹介した言葉と共に「人の役に立ちたい」と言う言葉をセットのように伺うのも、同じ意味合いでしょう。

アイデンティティ獲得に有益なのは、自ら積極的に「人々の輪」の中へ入り、自ら積極的に「かかわっていく」事だと言えます。
会社や学校、同僚やクラスのグループ、クラブやサークル、ボランティア活動の団体、趣味のグループ、草野球やサッカーのチーム、習い事などなど、小さなグループから大きな団体まで、様々な人の輪があります。
人の輪に加わり、そのかかわりの中で辛い事や嫌な事があってもすぐ逃げ出さずに、1度はそれを乗り越える努力をしてみましょう。
乗り越えようと努力する姿は、周りの誰かが必ず見てくれていますし、それによって周りの人から認められて自分の役割や居場所を見つける事もあるでしょう。
また、乗り越えられた事で自分の役割や新たな目標が見えてくる事もあります。
アイデンティティとは、こうした様々な経験を通して「自分自身で発見」していくものなのです。
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