人の不幸は蜜の味

「人の不幸は蜜の味」と言う言葉があります。
他人の不幸を見知って心地よく感じる事を例えた慣用句の一種ですが、この心の動きには「妬み」が含まれています。
最近、妬みや他人の不幸を喜ぶ心の動きが脳科学的に証明され、話題になりました。

健康な大学生19名を被験者とし、それぞれに自分が主人公のシナリオを読んでもらいました。
このシナリオには学生A、B、Cが登場するのですが、3人の特徴を挙げるとこんな感じです。(解りやすい表現にしてみました。)

◎学生A…自分と近しいが自分より優れた同性。
同じような趣味を持ち、同じような進路や目標を目指していますが、自分よりも成績が良く、自分より良い車に乗っていて、自分よりモテる人。

◎学生B…自分と近しくないが自分より優れた異性。
趣味や進路等は自分と異なりますが、自分より成績が良く自分より、良い車に乗っていて、自分よりモテる人。

◎学生C…自分と近しくないが自分と同等の異性。
趣味や進路等は自分と異なりますが、自分に似たような成績で、自分と同程度の車に乗っていて、異性からの人気も自分と同等の人。

被験者がシナリオを読み、学生A、B、Cに対する妬みの強さを6段階で評定した所、学生A、B、Cの順に(妬み度が)高い結果となりました。
同時に、機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)で脳活動を調べた所、妬みの評定が高かった学生A、Bに対して、脳の「前部帯状回」に活動が認められ、特に学生Aの方が強い活動が認められたそうです。

この後、被験者に、学生AとCに自動車のトラブル発生や恋人の浮気などの「不幸」が起こるシナリオを読んでもらいました。
学生AとCの不幸に対して抱いた嬉しい気持ちを6段階で評定した所、学生Cに対して嬉しい気持ちはなく、学生Aに対しては嬉しい気持ちの評定がありました。
学生Aに対する嬉しい気持ちの際に、脳の「線条体」の活動が認められたのですが、嬉しい評定が高いほど線条体の活動が高い事が解りました。
さらに、妬みの際に活動していた「前部帯状回」の活動が高い人ほど、この 「線条体」の活動が高い事も観察されました。
この実験等から、「妬みの感情が強い人ほど、他人の不幸を喜ぶ気持ちが強い」事が脳科学的に証明されたのだそうです。
とても興味深いですね。

妬みは、自分と他者の比較の中から生まれてくるものですが、特に自分に近い存在に対して生じます。
また、妬みは「自分が欲しても手に入らないモノを持っている他人」に対して生じます。
例えば、EXILEに憧れて歌とダンスを習い始めたとして、EXILEのメンバーに対して嫉妬の気持ちは持たないでしょう。
一方、同じ頃に習い始めた同い年のEXILE好きの同性が、歌もダンスも自分よりずっと上手だとしたら、何だか不快な気持ちになるでしょう。
この例の場合、自分が欲しても手に入らないモノは「歌とダンスの上手さ」ですが、それを持っている自分に近い存在、つまり同じ頃に習い始めた同い年の同性に対して妬みの感情を持っていると言えます。

妬みの中には羨望だけでなく、欲しいものが手に入らない苛立ち、不公平感、敗北感、屈辱感、自信喪失、等いろいろな感情が含まれています。
これらの感情は大変不快なため心の奥にしまい込んでしまい、普段は明確に意識出来ませんが、不快な感覚は残っています。
妬みの的の人が「不幸」な目に遭った事を知ると、嫉妬の中の不公平感や敗北感がある程度満たされるため、嬉しい気持ちになるのかも知れません。

もし、特定の人の不幸を見知って心地よく感じた(面白かった、スカっとした、晴れ晴れした)時は、その人が持っていて自分にないモノを探してみましょう。
そして、努力して手に入りそうなものは今より少し努力してみると、もっと幸せになれるかも知れませんね。
[1]週刊ココロコラム
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