要領がいい

学生時代、鉛筆で「静物画」を描く夏休みの課題がありました。
指定されたのはかなり大きめのスケッチブックで、それも1日1枚、つまり40枚分の絵を提出しなくてはなりません。
私は普段から、画用紙いっぱいどころか、はみ出すくらい大きく絵を描くので1枚描くのに随分時間がかかります。
描くのが面倒でほったらかしにしていましたので、始業式3日前になって慌てて描き始めました。
花びんや藤カゴやカバンなど、画用紙いっぱいになぐり描きし続け、始業式当日の朝方までかかってなんとか提出に間に合いました。
課題の提出の時、友人が数時間で40枚描いたと言うのでびっくりして、友人のスケッチブックを見せてもらいました。
すると、安全ピンや釘、画鋲など小さな物が大きなスケッチブックの真ん中に「原寸大」で精巧かつ丁寧に描かれており、画用紙に大きく描く事しか頭になかった私は衝撃を受けました。
課題の評価は、予想通り友人が「A」(一番良い評価)で私は「C」(4段階中3番目)でした。

イギリスの心理学者のワイズマン博士は、運の良い人と運の悪い人の違いは何なのかを研究されていました。
自分は常に運が良いと感じている人達と自分は常に運が悪いと感じている人達に対して、様々な実験を行いましたが、その中で興味深いものをご紹介します。

被験者に新聞を渡し、新聞に掲載されている写真が何枚あるか数えるように指示します。
運が良いと感じている人達の多くが、数え始めてすぐ新聞の三ページ目に掲載されている広告をみつけました。
その広告はページ半分の大きさで、はっきりと「これ以上見る必要はありません。この新聞にある写真の数は42枚です。」と書かれていました。
一方、運が悪いと感じている人達のほとんどは、写真を数える時間も手間も省ける「チャンス」があったのに、 この広告に気付かず、新聞の端から端まで丹念に写真を数えたのです。
個人的な見解ですが、この差は要領のいい人とそうでない人の差と同じだなと思いました。

「要領がいい」と聞くと、あまり良いイメージを持たない人がいます。
それは、この言葉の中に「人に取り入るのが上手い」と言う意味も含まれているからなのでしょうが、それだけではありません。
少ない労力や時間であっさりと事を成し、しかもコツコツ地道に頑張った自分より量・質の良い成果を出すタイプの人に対して、憎々しげに「あいつ要領がいいから」と思う事もあります。
しかし、見方を変えると、真面目でどんな事も地道にコツコツやる「要領の悪い」タイプの人は、先の実験と同じように「時間も手間も省けるチャンスに気付かない」ために真面目に頑張ってしまうのかも知れませんね。
そして、要領のいい人は、それらのチャンスに気付く事が出来る広い視野と柔軟な考え方を持ち、行動出来るからこそ、合理的に良い成果を出せるのかも知れませんね。
先の友人は、成績も良く何でも軽々とこなすだけでなく、私には到底真似が出来ない位、いろんな事にたくさんチャレンジして充実した学生時代を過ごしていました。
当時の私は若干やっかみを抱いていましたが、今にして思えば、時間も手間も省けるチャンスに気付き、行動出来たからこそ、一度に多くのチャレンジが出来たのでしょう。

ちなみに、ワイズマン博士は「運の良い人は人生のチャンスを作り出し、そのチャンスに気付いて行動を起こす。」と述べています。
また、運を良くするには次の4つを実践する事と説いています。

・チャンスを最大限に拡げる→対人関係を拡げる、リラックスするなど
・虫の知らせを聞き逃さない→直感を磨く、直感を信じるなど
・幸運を期待する→目標を立てる、ポジティヴ思考など
・不運を幸運に変える→ポジティヴ思考、諦めない、積極性など

全てを実践するのは人によって難しいかも知れませんが、今の自分よりちょっとだけでも「要領のいい人」を目指すと、今よりも運が上がるかも知れませんね。(^^)
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