続々・孤独

第285回,286回で孤独についてのコラムをご紹介しました。
今回はその続編で、ちょっと辛口&ささやかな脅迫付きです。(^^;

孤独を感じる人の中には、こんなカラクリがあるかも知れません。
他人と一緒にいると、気を遣ったり、自分を押し殺して相手に合わせたり、相手の事を気にしながら話題を振ったり、相手に悪いからと遠慮したり…。
こう言うのって窮屈で面倒ですし、いろんな事を我慢しないといけませんし、とにかく精神的に疲れます。
自分ひとりならば、こんな気遣いも気苦労も我慢も遠慮もしなくて良い上に、何より誰かに傷つけられる事も裏切られる事もありませんから、辛い思いもしません。
それにひとりだと、自分の好きな事を自分で思いついた時に、自分の思いのままに出来るので気楽で愉快です。
現代は本や音楽やインターネットやゲームなど、ひとりで楽しめるツールがたくさんあって、楽な方に向かいやすい状況が整っています。
ひとりで過ごす楽チンさを知り、快さを堪能すればするほど、他人と一緒にいる時に窮屈さを感じ、精神的な疲労が強くなっていきます。
辛いのは誰でも嫌ですから、なるべく人との交流を避けて自分ひとりになろうとします。
しかし、人とのつながりが全くないのは誰でも寂しいものです。
そんな人にとってメールは、窮屈さが少なくてつながりを感じられる「最適なコミュニケーション」なのかも知れません。

コミュニケーション能力は生まれつき備わったものと言うよりも、経験によって培われる後天的な能力です。
人との交流を避けていると、コミュニケーション能力が備わらずに、対人関係がどんどん苦手になってしまいます。
コミュニケーション能力の中には、「自分の思いを相手に伝える」とか「相手に自分を理解してもらう」等も含まれています。
対人関係が苦手で避けているうちに、自分を上手く表現出来ずに相手に解ってもらえず、失望して、余計に人との距離をとろうとする悪循環が生じるかも知れません。
自らが他人との間に距離をとった事で、ふと気付くと心を許し合える人がひとりもおらず、強い孤独を感じているかも知れません。

アメリカ・シカゴ大学の心理学者John Cacioppo氏が発表した、孤独に関する興味深い研究結果がありますのでご紹介します。

孤独感や独りぼっちの寂しさを感じると、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌量が増えて、血圧が高まります。
孤独を強く感じている人とそうでない人との血圧は30程度も差があったそうです。
コルチゾールの分泌量増加は、さらに免疫系の機能を弱めますので、不定愁訴や病気にかかりやすくなります。
他には、ゆううつ感を高め、眠ることが困難になり、生活が不規則となります。
また、痴呆を促進するとも述べられています。
これは、ひとりで得られる情報量の少なさと偏りが生じるためか、孤立する事によって脳の柔軟性が欠落してしまうからではないかと推測されています。
孤独な人は、運動せずに静かにしている事が多く、多くのカロリーを摂取する事になるとも述べています。
孤独は喫煙や肥満と同じく健康に害がある、研究者は「この結果は、私を含め、研究チーム全員を気絶させるほどだった」と述べています。

「うさぎは寂しいと死ぬ」は迷信ですが、先の研究結果で「人は寂しいと死ぬ」可能性が高くなる事が、科学的にも立証された訳です。
高齢者の孤独死が社会的にも問題になっていますが、もしかすると孤独でなければもっとお元気で長生きをされていたのかも知れませんね。
絶海の孤島ではなく、見渡せば容易に人を見つけられる環境で、物理的にも精神的にも孤独を味わうのは、筆舌に尽くし難いほど辛い事でしょう。

家族や友人・知人など周りに身近な人が大勢いるのに、常に強い孤独感を抱いている人は、自分でストレスホルモンの分泌量を増加させ、自分自身の体調を悪くする要因を作っているのです。
そんな人は自分自身のために、何事も経験だと言う心積もりで、人の輪の中に入る少しの勇気を出してみて下さいね。
[1]週刊ココロコラム
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