美味しいテクニック

以前、会社にお菓子が大好きな同僚がいました。
休憩時間になると、ブルボンのプチシリーズ等の袋をガバッと拡げ、周囲の人たちにお菓子を勧めながら楽しそうに食べていました。
仕事の合間につまむ数枚のクッキーや数粒のチョコレートがとても美味しく感じます。(^^)
お手製のお弁当を持ってきているのに、お昼休みにコンビニへ行く人がいるとついて来て、お菓子の新製品を見つけては買い込み、食事後に皆と一緒に食べていました。
新人さんが慣れない素振りで休憩室に入って来るのを見かけると「こっちおいでよ」と気さくに声をかけ、同じようにお菓子を勧めていました。
持っている文具もお菓子モチーフが多く、彼女からの伝言が書かれていたアポロチョコ柄のメモ用紙を見て、ホントにお菓子が好きなんだなぁと、つい笑ってしまった事もあります。
気さくで明るくてとても良い印象の人で、職場でもプライベートでも友達が多く、彼女に対する悪い話も嫌な噂も全く耳にしませんでした。

心理学者ラズランは、こんな心理実験を行いました。
被験者に「(政治的な)意見」を提示してそれぞれにその意見に対する評価を聞きました。
時間を置いてをもう一度同じ意見を提示したのですが、一方のグループはそのままで、もう一方のグループには食事をしてもらい食事中に意見を提示してそれに対する評価を聞きました。
食事を取らなかったグループは1回目・2回目の評価に変化はありませんでしたが、食事をとったグループは1回目よりも2回目の方が好意的な評価が増えていたのだそうです。

食べる事は人間の三大欲求の1つで、欲求を満たす=食べる事で「快」、つまり心地よさを感じます。
特におなかが空いている時に「美味しいものを食べる」事は、とても心地よいものです。
そして、このような心地よい時の体験や記憶は肯定的になりやすい傾向があります。

この心理効果を元にした「ランチョン・テクニック」というものがあります。
これは主にビジネス等の交渉事を有利に運ばせる時に良く使われるテクニックで、食事を取りながら交渉事を行う方法です。
食べる時の心地よさから緊張がほぐれると共に、心地よさを楽しむために対立的な空気を避けようとします。
さらに、先ほどの実験のように肯定的な評価になりやすい所から、交渉事を受け入れてもらいやすくなると言うカラクリです。
政治家の料亭での密談や、営業マンがお得意様を食事接待するのもランチョン・テクニックと言えるでしょう。

美味しいものを食べる事で、緊張がほぐれて、対立的な空気を避け、肯定的になるランチョン・テクニックは、ビジネスだけでなく対人関係全般に使えるテクニックです。
最初にご紹介した、お菓子が大好きな同僚は知らず知らずにランチョン・テクニックを使っていたと言えるでしょう。
緊張がほぐれるのですから、知り合ったばかりの相手との親密さを増すために有益です。
対立的な空気を避けて肯定的になりやすくなる傾向がありますから、ケンカ中の恋人や友人と仲直りするきっかけにもなります。
同じように、あまり仲の良くない同士が互いを理解しあうきっかれにもなるかも知れません。
交渉事を上手く運ぶテクニックですので、何かお願い事や頼み事がある場合にも良いでしょう。

それともうひとつ。
心地よい時の体験や記憶は肯定的になりやすい傾向は食事だけに限った事ではなく、お茶やお酒、気分の良い場所や快適な環境、プレゼントなど、相手が「心地よさを感じる」ものであれば同様です。
実際に行われた実験で、BGMや部屋の温度湿度などによって相手の印象に差がある事が実証されており、「フィーリング・グッド効果」と呼ばれています。 ランチョン・テクニック同様、恋愛の場面に限らず対人関係全般で使えるテクニックと言えるでしょう。

相手から好印象を持ってもらいたい、あるいは相手と親密になりたいと思う場合は、気分の良い場所で美味しいものを頂く機会を作れば良い結果を得る事が出来るかもしれませんね。(^^)
[1]週刊ココロコラム
[2]TOPに戻る