下準備

こんな経験はありませんか?

1.翌日テストと言う時に限って、何だかつい一生懸命掃除やゲームをしてしまう
2.明朝に試合があるのに、ついつい深夜まで映画を見てしまった
3.明日プレゼンがあるのに、帰宅は午前様になってしまったのは誘われて仕方なく飲みに行ったから
4.テスト勉強を十分やったのにクラスメイトには「全然勉強しなかった」と言った
5.ほとんど影響のなかった小雨だったのに、試合に負けたのは「雨だったから…」と話した

テストや試合やプレゼン等、いずれも自分自身の能力や評価が問われる事柄です。
そんな大切な日を前にして、テスト勉強や練習などとは全く関係ない事をやってしまった経験をされている方は多いかも知れませんね。
逆に、一生懸命勉強や練習をしたのに、周囲には「しなかった」と、つい軽い嘘を言ってしまう、なんて経験もあるかも知れません。(^^;

自分自身の能力や評価が問われる事柄で、なおかつ良い結果や高い評価が出せる確信が持てない(つまり自信がない)ような時、私達は自分を守るためにある「下準備」をする場合があります。
何の下準備かと言えば「ハンディキャップ」で、能力や評価が問われる事柄にとって不利・不都合になるような行動を自らとる、または不利な要因を主張する事です。
これは「セルフ・ハンディキャッピング(Self-handicapping)」と呼ばれています。
言葉は悪いですが、噛み砕いて言えば「言い訳」の根回しや「逃げ道」の確保ですね。
アルコール依存症の患者さんが、自分がこんな風になったのも人生が狂ったのも「酒のせい」と言うのも、典型的なセルフ・ハンディキャッピングです。
先ほどの1〜3は実際に行動してハンディキャップを作っているものですが、これらは獲得的セルフ・ハンディキャッピングと言います。
4,5は他者に主張しているタイプで主張的セルフ・ハンディキャッピングと言います。
またハンディキャップは自分に向かっているものと他者に向かっているものがあります。
セルフ・ハンディキャッピングは自尊心を守る自己防衛のひとつですから、意識していなくても誰でも自然と行う場合があります。

能力や評価が問われる事柄に対して、精一杯頑張って取り組んで、悪い結果や良くない評価であれば「自分はその程度の(能力が低い)人間」と認めざるを得なくなります。
これでは自尊心のダメージはとても大きくなりますので、セルフ・ハンディキャッピングによって、悪い結果や良くない評価はハンディキャップのせいにします。
例えば、テスト前日に「つい気になって」掃除をしはじめたら止まらなくなり、掃除で夜更かししてしまい寝不足。
こんな状態で挑んだテストの結果が悪かったとしても、『掃除で勉強出来なかった』『寝不足で体調が悪かった』ハンディキャップのせいで、本来の自分はもっと力を発揮できる人間である、と考えられるため自尊心が守られます。
また、思ったより良い成績だった場合は、『掃除で勉強出来なかった』『寝不足で体調が悪かった』のに、ここまで出来た自分は凄いと自分を鼓舞する事も出来ます。

マイナスの結果でもダメージが少なく、プラスの結果であればさらにプラス要素が増えるセルフ・ハンディキャッピングは、とても便利な防衛手段です。
便利だからと言って、あまり多用すると努力そのものをしなくなるため、元来持っている自分の力を発揮する事が難しくなります。
特に、他者に向かう主張的セルフ・ハンディキャッピング(早い話が責任転嫁)が慢性化してしまうと、円滑な対人関係が保てなくなる恐れがあります。
セルフ・ハンディキャッピングを行う時は、良い結果や高い評価に執着しているがそれらを得る自信がない時です。
結果や評価が出る前に「下準備」をしていた事に気付いたら、是非このコラムを思い出して下さいね。
[1]週刊ココロコラム
[2]TOPに戻る