本能

「匂いで異性を選んでいる」
先日見たテレビで取り上げられていた内容です。
以前から良くテレビや雑誌等でも取り上げられていますし、一部では「恋愛遺伝子」などと呼ばれていますので、ご存知の方もいらっしゃるかも知れませんね。

こんな興味深い実験結果(1997年)があります。
男性4名、女性2名に2日間同じTシャツを着続けてもらい、そのTシャツの匂いを男女121名に評定してもらいました。
同時にTシャツの提供者と評定者それぞれの遺伝子(MHC/主要組織適合抗原複合体・HLA遺伝子)を調べました。
Tシャツの匂いの評定項目の中には「好感度」があったのですが、遺伝子が遠いほど好ましい匂いと言う実験結果が出たのです。

遺伝子の遠い異性と結ばれ、丈夫で強い子を授かる、つまり強い子孫を残す本能なのでしょう。
男女ともにその傾向が見られたそうですが、別の説では女性の方がこの傾向が強く、特に月経時には匂いに対する感度が高くなるというものも見られました。
また別の実験などから、女性は妊娠をすると自分に近い遺伝子を持つ人の匂いに対する好感度が高まると言う、先ほどとは真逆の結果もあります。
これは、か弱い子供を安心して養育するために、身内や親族など近しい人達に保護してもらうためではないかと言われています。
無意識に遺伝子の遠い異性を選び、女性は妊娠すると遺伝子の近い人を選ぶ、上手く出来ていますね。

もうひとつ、面白い実験結果(1992年)をご紹介します。
男女それぞれの被験者に「あなたの恋人が他の異性に対して次の浮気をしていたとしたら、どちらが苦しいか」と質問しました。
『心から惚れている(精神的な浮気)』
『セックスを楽しんでいる(体の浮気)』
実験の結果、男女で大きな違いがあり、男性の約6割が「体の浮気」を選び、女性の約8割が「精神的な浮気」を選びました。

生物学的に見れば、男性にとって生まれてくる子が我が子かどうかは本当の所は解りません。
人間以外にもメスが体内で子供を宿す動物も同様で、これを父性の不確実性と言います。
自らの子孫を残そうとする本能から、男性は恋人の「体の浮気」の方が重大だと捉えるのです。
ちなみに、オスは自分の配偶者が他のオスの子を産むような行為を阻止するために、他のオスから遠ざけたり接触させないようにしようとします。
これは配偶者防御と言います。
彼女が他の男性と親しげに挨拶しただけで不機嫌になったり、恋人になった途端、露出の多い服装や派手な化粧を嫌がるのは、もしかすると配偶者防御なのかも知れませんね。

一方、女性の選んだ「精神的な浮気」は、先ほど紹介した匂いと遺伝子のお話にも共通する理由があります。
か弱い子供を安心して養育するために、身内や親族など近しい人達に保護してもらう必要がありますが、その中でも特に父親の保護が重要です。
父親の心が自分と子供に向いていないと、保護が受けられない可能性がありますので「精神的な浮気」の方が重大だと捉えます。
彼氏が仕事や趣味に熱中していると「自分と仕事(趣味)、どっちが大切なの」と怒り出したり、風俗に行くより会社の女の子と2人だけで会う方に嫉妬するのは、こんな所から来ているのかも知れませんね。

男女間の様々な問題も、遺伝子や生物学的な目で見ていくと興味深い面がありますね。

余談ですが、男女に関するコラムを書くと時々性差別をしているとお叱りのメールを頂きます。
私自身は男女に違いがあって当然とは思っていますが、決して差別している訳ではないんですけどね…(^^;
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