簡単な質問のカラクリ

今回のコラムのは、まず簡単な質問をします。あなたなら、AとBのどちらを選びますか?

【その1】
A・今100万円貰える
B・サイコロを振って、奇数が出たら200万円貰えるが、偶数が出たら一銭も貰えない

【その2】
※あなたは200万円の借金を抱えていると前提します。
A・借金が200万円から100万円に減額される
B・サイコロを振って、奇数が出たら借金はチャラ(全額免除)、偶数が出たら借金はそのまま200万円

【その1】のAは100万円×100%=100万円、Bは200万円×50%=100万円で、どちらも+100万円です。
同様に【その2】のAとBはどちらも-100万円で同額です。
難しい計算をするまでもなく、AもBも期待値は同額である事が解りますので、どちらを選択しても良いはずです。
しかし、多くの人が【その1】では確実に100万円貰えるAを選びますが、【その2】になるとギャンブル性の高いBを選ぶと言う「偏り」が生じる事が実験で明らかになっています。
この実験から一般的に、利益(プラス)の場合はリスクを回避して確実性を優先させますが、損失(マイナス)の場合はリスクよりも損失そのものを回避しようとする傾向があるとされています。

論理的に同等、あるいは客観的特徴が同じだとしても、その事を認識・解釈する時の心理的な「枠や範囲」によって、意思決定の結果が異なる現象があります。
これは経済学などで良く知られる「プロスペクト理論」のひとつ、「フレーミング効果」と呼ばれています。
平たく言えば、先ほどの質問の選択肢A・Bのように「同じモノ」でも表現が異なると、異なる選択をしてしまう訳です。
例えば、ある難病用の新薬が開発されたとして、「この薬は75%の方が完治します」と言うのと「この薬は25%の方には効きません」と言った場合。
例えば、「15万円の液晶テレビが今なら3割引」と言うのと「15万円の液晶テレビが今なら4万5千円引き」と言った場合。
薬は「75%完治」、テレビは「4万5千円引き」の方が、多くの方に選択してもらいやすい事が解ると思います。
実際にフレーミング効果は、商品の宣伝や営業、店舗の商品レイアウトなどでも頻繁に使用されています。

フレーミング効果は主に数字や経済的な事柄で説明されていますが、フレーミング効果の元のような心理的な「枠や範囲」は日常で誰でも使っています。
例えば、20:00閉店の店を「20:00までしかやってない」と説明するか「20:00までやってる」と説明するか。
シュークリームを2個を「2個しかない」と話すか「2個もある」と話すか。
休憩時間が「あと15分しかないよ」と告げるか「まだ15分あるよ」と告げるか。等々。

NLP(神経言語プログラミング)の中で有名な技法で「リフレーミング」と言うものがあります。
心理的な「枠や範囲」、つまり習慣になっている考え方や捉え方などを変えるもので、主に物事に対してネガティヴに捉えている意味付けをポジティヴな意味付けに変える手法です。
例えば、「地味でネクラで、無口で気が弱くてだらしなくて、でも頑固でわがままな自分」と考えると『価値の無いちっぽけな自分』に落ち込むでしょう。
「素朴で自分の世界を大切にして、控えめで我慢強くておおらかで、そして意志が強くて自分の意見をはっきり持っている自分」と意味を変えて考えると、少なくとも落ち込む事はないはずです。
物事をネガティヴに捉える傾向のある方は、リフレーミングのように「意味付け」をポジティヴに変えていく事で、落ち込みや憂うつやストレスが少なくなる可能性があります。
実践する場合まずは、コップ7分目まで入った水を見て「7分目しかない」から「7分目もある」と思う、と言った感じで、フレーム効果のように数字やはっきりとした割合などから始めると解りやすいかも知れませんね。
[1]週刊ココロコラム
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