自己開示

状況にもよりますが、初対面の人とすぐに打ち解けて何でも話し合える人は少ないでしょう。
最初は互いに相手がどんなパーソナリティか解りませんので、大体は差しさわりのない話題等でコミュニケーションをとっていきます。
そしてコミュニケーションを取り続けて、少しずつ相手との距離を縮めて親しくなって行きます。

例えば、クラス替えで隣の席になった初対面の同性がいました。
最初は勉強や担任の先生の事、当番の事など、「同じクラスの一員」の共通の話題でも、話すうちに、共通の知人がいたとか家が近所だと言う事を知ると、今までより少し相手を身近に感じて仲良くなるでしょう。
このような感じで、少しずつ親しくなっていきます。
逆に、互いの相性や考え方や立場の違い等があって、あえて仲良くならない場合や、逆に仲たがいする場合もありますね。

ある程度仲良くなっても、それ以上進展せずに「ただの仲間のひとり」に留まる場合と、「友人」にまで発展する場合があります。
一般的に、いつも孤立していたり、友人が極端に少なかったり、他の仲間から「ただの仲間のひとり」としか思われないタイプの方は、自分のプライベートな情報を他人に話さない傾向があります。
「ただの仲間のひとり」から「友人」に親密さを発展させるには、「自己開示」が必要だと言われています。

自己開示とは、自分の情報を開示する、つまり自分自身の情報を相手に伝える事です。
自分自身の情報とは、趣味や志向や考え方や、生い立ちや悩みなど自分自身のプライベートな情報を指します。
プライベートな情報は、自分の弱い部分や人に知られたくない部分も含まれていますので、信頼できる相手でないと打ち明けられない傾向があります。
相手からすると、信頼してくれているからそのような内容を話してくれたと感じるでしょう。

心理学では、人は他者から頂いた利益や行為に対して、それと同等のものをお返しするべきであると思う規範「返報性の規範」があるとされています。
自己開示に関しても返報性があり、相手がプライベートな情報を話してくれた事で、今度は同じだけ自分の事を話そうとする傾向があります。
そうして、互いに相手のパーソナリティを理解して互いの親密度が増していきます。
余談ですが、返報性は相手が自分に好意を持っていると感じると、自分も相手に好意を持つ「好意の返報性」も有名です。

自己開示が出来ない人は、他者からすると「何を考えているか判らない人」と言う印象を持たれやすく、人との距離が縮まりませんので、円滑な対人関係を築き難いです。
自分の事を話したがらないのは、個人によって様々な理由があるでしょうが、その中に「他人を信頼できない」と言う要素も含まれているのではないでしょうか。
別の言い方をすると自己開示が出来ない人は「他人に対して心を閉ざしている」とも言えるでしょう。

頑張って自己開示しようと、会って数時間しか経っていない人に深刻な悩みを打ち明けたり、複雑な家庭環境の話をしても、相手に引かれてしまいます。
延々と自分の自慢話をしても嫌がられますし、自分を卑下して「そんな事ないよ」を言わせ続けられるとうんざりします。
その時その時の、互いの距離感に応じた自己開示が重要です。
これまで、自己開示が出来ずに親密なコミュニケーションをあまり経験していない人は、互いの距離感や「人と仲良くなる過程」が解らず、何をどうして良いか解らないかも知れません。

コミュニケーションは経験によってスキルが向上します。
孤立しやすい、友人が作れない、対人関係が苦手と言う方は、自分はそういう人間だと決め付けたり、コミュニケーションから逃げ続けていると、心の底の孤独感は解消されないでしょう。
まずは、失敗を恐れずに自分から他人に心を開いてみて下さい。
[1]週刊ココロコラム
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