伝染(うつ)るんです

某漫画と同じタイトルですが、何が伝染するかと言うと「感情」です。
以前、コラムでイライラが伝染する事はご紹介しましたが、イライラだけでなく様々な感情が伝染します。
例えば、友人が笑い転げていたらつられて笑ってしまったり、知人が泣いていると「もらい泣き」したり、家族が落ち込んでいると何となく気分が沈んだり…どなたにもこんな経験があると思います。
これらのような「ある人の感情が、他の人に同じような感情的な影響をもたらす」事象は、社会心理学では「情動伝染」とか「感情伝染」と呼ばれています。

情動伝染は科学的な研究結果によっても少しずつ明らかになっています。
いくつかご紹介しましょう。

アメリカのシカゴ大学やハーバード大学の研究チームが行った大規模な調査データを分析した結果、「寂しいと感じている人は悲しげな気持ちを周囲の人に波及させる傾向があり、最終的に社会から孤立していくことが分かった」と発表しています。

アメリカ心理学協会の専門誌「サイコロジカル・サイエンス」に掲載された論文によると、被験者を2つのグループに分け、一方のグループに自然の映像やコメディ映画を、もう一方のグループに善行を勧める映像を見せた所、善行を勧める映像を見たグループの方が、ボランティアに参加する意志やパソコンの修理に協力する人が多かったそうです。

ハーバード大学とカリフォルニア大学の教授らによる共同研究によると「誰かの幸福感に変化が起きると、「幸福」または「不幸」な人々の社会的また地理的な集団が形成される」と発表しました。
具体的には、幸せな友人が1マイル(1.6キロ)以内に住んでいれば、自分も幸福感を感じる可能性は25%増加し、同居人が幸せな場合は8%、近くに住む兄弟姉妹の場合は14%、隣人の場合は34%増えるそうです。

これらの研究結果から「寂しさ」も「善行(人助け)」も「幸福感(不幸感)」も伝染する事が見て取れます。

情動伝染は、楽しい・明るい・嬉しい等のポジティヴな感情よりも、怒りやイライラ・恐れや不安・憂うつ等のネガティヴな感情の方が伝染力が大きいと言われています。
自分がちょっと凹んでいる時に、酷く落ち込だ友人と会った事で、その憂うつ感が伝染し、自分まで酷く落ち込んでしまった。
仕事が進まずにイライラしていたら、隣の同僚もイライラし出し、互いのイライラが伝染し合って、職場内が嫌な空気になった。
グループの中に凄くやる気のない人がいて、その無気力感が伝染し、グループ全体のモチベーションが下がってしまった。
このような、ネガティヴな感情の伝染は良くある場面かも知れませんね。

情動伝染は、相手の体験や感じている事を自分も同じように感じたり理解しようとする「共感」とは異なります。
他者から受ける感情的な影響は自然に発生する、平たく言えば、誰かの感情に「つられて」自分の感情も動くものです。
ですから、伝染した感情には、その感情になる「理由」がありません。
何故落ち込んでいるのか、イライラしているのか、無気力なのか、自分自身で解せないため、他の理由を探したり、何かのせいにする場合もあります。
そして、それが誤解や確執を生む可能性がないとは言えません。

もし誰かのネガティヴな感情に影響されたとしても、「ああ、今、自分は相手につられてるな」と気付ければ、それ以上伝染しないでしょう。
ポジティヴな感情になりたければ、ポジティヴな感情の人と会ったり、ポジティヴな感情を現している映画やドラマを見るのも良いです。
また、自分が楽しい・明るい・嬉しい気持ちの時は、その気持ちを表現する事で、周囲の人たちが伝染し、和やかで楽しい人の輪になるでしょう。
そして、互いにその感情が伝染し合って、もっと楽しい・明るい・嬉しい気持ちになるはずです。
「人に幸せな気分をおすそ分け」しても減らないどころか、さらに増えるのですから、とりあえず明るい笑顔を振りまいてみて下さい。(^^)
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