対人関係の公式

商売をしていると純利益を伸ばしたいとあれこれ努力をします。
純利益は売り上げから諸経費を差し引いたものですから「純利益=売り上げ−諸経費(コスト)」と記せます。
コストが掛かりすぎる商品や売り上げ自体が少なければ、純利益が少なくなりますので、商売人はいかにコストを下げて売り上げを伸ばして効率良く純利益を得るか試行錯誤を繰り返すでしょう。

実は、この「純利益=売り上げ−諸経費」と同じ公式が対人関係にもあてはまると言う考え方があります。
それは「成果=報酬−コスト」で表されます。
報酬とは、その相手と交流する事で自分が得られる「欲求の充足」「利益」「自己肯定感」「価値の実現」などを指します。
コストとは、その相手と交流する事で自分が失うモノ(時間、お金やモノ、労力、精神的なエネルギーなど)を指します。
この報酬からコストを引いた分が成果で、その相手と交流した場合の「満足度」と言えます。
そして商売人同様、効率よく成果を上げる相手を求めようとします。

これだけみると、自分はそんな計算して人と付き合っていないと思いたいところですが、実は誰しも無意識にしています。
例えば、交流する相手が自分の愚痴ばかり話したり、いつも相手の趣味や都合に付き合わされたり、会う度に何かと頼まれものされたり、しょっちゅう金銭的に損をする、と言った相手であれば『この人と付き合うと疲れる』と思い、なるべく付き合いを減らそうとするのではないでしょうか。
一方、交流する相手が自分の愚痴をいつも聞いてくれたり、はげましてくれたり、自信を持たせてくれたり、良い気分にさせてくれたり、自分の思いを叶えてくれれば『この人と友達で良かった』と思い、相手との交流をもっと大切にしようと考えるでしょう。

この対人関係の公式は、社会学の概念である「社会的交換理論」が心理学に取り入れられたもので、対人関係の相互作用を「交換」と言うプロセスによって説明しています。
他にも第三者との比較などの公式もあるのですが、今回は割愛して機会があればご紹介します。
「成果=報酬−コスト」だけを見ると、人間って何と打算的なのかと思いたくなりますが、こんな心の動きもあります。
それは「返報性」です。

返報性とは、何かを頂いたり親切にしてもらう等、相手から恩恵を得るとお礼やお返しがしたくなる心理です。
返報性は自然な心の動きではありますが、小さい頃より教わってきた社会的規範でもあります。
交流する相手が自分の愚痴をいつも聞いてくれたり、はげましてくれたり、自信を持たせてくれたり、良い気分にさせてくれたり、自分の思いを叶えてくれれば『この人と友達で良かった』と思うと同時に、『自分も相手に同じ事をしてあげたい』『恩返しをしたい』と言う気持ちが生まれます。
そのため、相手が落ち込んでいればはげましたり、話をじっくり聞いたり、相手の思いを叶えてあげようとします。
すると、今度は相手が自分に対して『自分も相手に同じ事をしてあげたい』『恩返しをしたい』と思います。
相互に「報酬」を与えると報酬が増えて「成果」があがりますから、互いにその相手と交流した場合の「満足度」が挙がります。
これが、親友や恋人のように互いに強い絆が生まれるひとつのカラクリなのです。
[1]週刊ココロコラム
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