今、ここ、を生きる

元々、日本人は個人よりも集団(例えば家族・会社・部活・地域などの集まり)を重視し、周囲の空気を察して歩調を合わせようとする傾向を持っていました。
そのため、他の国の人達に比べて自分の感情をストレートに表現する事が苦手ですし、周囲に合わせるために自分の意思や感情を抑えるタイプの方は結構多い傾向があります。

どんな場面でも常に自分の意思や感情を抑えているタイプの人もいらっしゃいます。
その理由としては、支配的な親の顔色を見て育った、過保護・過干渉な親の元で育った、気が弱くて繊細、他人からの評価を非常に気にする、他人から嫌われる事に強い不安を持っている、気を遣い過ぎる、「〜でなければならない」と言う観念思考、等々が考えられます。
周囲に合わせるために自分の意思や感情を抑えるのは、協調性があると言うよりも他者(周囲)に追従(服従)していると言う方がニュアンスが近いのかも知れませんね。

意思や感情を抑え続けていると、だんだん自分自身の意思や感情を自覚し辛くなり、嫌な事や辛い事も、嬉しい事や楽しい事も、自分がどうしたいのかも感じにくくなる傾向があります。
嫌な事や辛い事が感じにくいのは良いとしても、何をしたいのかも解りませんし、何をやっても喜びや楽しさを感じにくくなりますので、幸せや満足感・充足感のない日々が続く事になります。

精神分析療法と心理学のゲシュタルト理論が融合して出来た「ゲシュタルト療法」と言うものがあります。
ゲシュタルト療法の目指す所は「今、ここ、を生きる人間」で、現実を見て自分自身の感情を自覚し行動する事です。
それを端的に表した9原則がありますのでご紹介します。

1.今に生きる
終わってしまった過去に執着せず、まだ起きていない未来に対する不安や心配にとらわれず、「今」(現在)に目を向ける

2.ここに生きる
何かをしながら他の心配事など別の事を考えるのではなく「今」(目の前)に目を向ける、足元を見る

3.想像をやめて現実的に物事を捉える
あれこれと先走って考えたり、余分に想像する事をやめて現実を体験しようとする

4.考える事より感じる事を選ぶ
先入観や様々な観念で考えるのではなく、自分が何を感じているかに目を向ける

5.判断するよりも表現する
他人の意見に流されたり、他人を操作しようとしたり言い訳や正当化ではなく、自分の気持ちを率直に表現する

6.不快な感情も受け入れる
嫌な事や苦痛から逃れるのではなく、向き合って受け入れる

7.権威者を作らない
盲信したり、全て委ねたり、追従・服従するような対象を作らない

8.自分自身に責任を持つ
責任転嫁や他者のせいにするのではなく、自分の感情・意思・行動や、自分がした選択に責任を持つ

9.自分自身であれ
他者と比較したり、真似するのではなく、自分であろうとする

私達は様々な観念や先入観、思い込みや嫌な想像などで思いを巡らしてしまうと、起きた現実や自分の感情を歪めて捉える場合があります。
起きた現実をまっすぐ捉え、自分の意思や感情をそのまま自覚するには、ゲシュタルト療法の9原則が良い指針になるかも知れませんね。
自分の豊かな感情や自由な意思を実感出来るようになれば、日々の暮らしの中で幸せや満足感・充足感をたくさん味わう事ができるでしょう。
[1]週刊ココロコラム
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