ゆとり

近年日本の子供達は世界的に成績が下がっており、2007年の中央教育審議会答申で「ゆとり教育による学力低下」を認め、これまでよりも授業数を増やす提言がされました。
それを受けて、来年から「脱ゆとり教育」と言われる新たな学習指導要領が施工されます。

ゆとり教育を受けて来た人たちは「ゆとり世代」と呼ばれます。
ゆとり世代は、コミュニケーション能力や処理能力の低さ、打たれ弱い、受身・指示待ち、個人主義、応用力・想像力に乏しい、非常識…等々、良く耳にします。
ゆとり世代に括られている人にとっては、ただその時代に生まれ育っただけで、受けたくてゆとり教育を受けた訳ではありません。
なのに酷い言われようをされて、中には歯がゆさや釈然としない思いを持っている方もいらっしゃると思います。

中間管理職の方10数名にお話を伺ったのですが、皆一様にここ1〜2年に入社した新人の対応に苦慮しているようでした。
「1から10まで言っても出来ない」「自分から動けない」「言われた事しかしない」「ちょっと指摘すると逆ギレしたり泣いたり辞めるヤツが多い」と言った意見が良く聞かれました。
「自分から動けない」「言われた事しかしない」と言われても、社会に出たばかりの新人さんですから、業務の事も社会の事も最初から何をどうして良いか解る筈がありませんよね。(^^;

お話を伺った中で最も印象的だったのは某大手企業の係長さんです。
ほぼ毎日の残業+サービス残業と月の半分以上休日出勤をしないと業務が回らないそうで、疲れた顔でこんな話をしてくれました。
「自分が新入社員で入った時は先輩からいろいろ教えてもらった。良く飲みに連れて行ってもらって仕事だけでなく社会の事も大人の事もたくさん教わった。
その頃は会社も社員もまだある程度の余裕があったけど、今は少ない人員でみんな目一杯仕事を抱えているので、新人さんに1から教えている余裕が全くない。
先輩がいたから今の自分がいるのに、いざ自分が先輩になって新人さんに手を差し伸べる余裕がないなんて凄く歯がゆい。」
不況でコスト削減のためにギリギリの人数で仕事をしている会社も多い昨今、新人さんを「育てるゆとり」がない会社がほとんどでしょう。
子供の頃は「ゆとり」で育てられたのに、大人になったら育てる「ゆとり」なしとは、厳しい現実ですね。

「ゆとり世代」は諸説あるものの大体1986〜87年以降生まれと言われていますので、現時点で20代半ばより若い人です。
私は多くの方々とお会いしていますが、先にご紹介した「ゆとり世代」の特徴(コミュニケーション能力や処理能力の低さ、受身・指示待ち等)を持つ方とも多く接してきました。
それらの特徴を持っている方は20代半ばより若い人だけでなく、30代〜40代の方も結構いらっしゃいます。
また、ゆとり世代である20代半ばより若い人(中高生含む)でもコミュニケーション能力が高く、自発的で応用性があり、自分の考えをしっかり持ちつつ他者への配慮もきちんと出来る方ともたくさんお会いしました。
人によって個性も特徴も違うのに、単に世代を括って「こんな特徴」と形付け、その世代だからその特徴を持っているだろうと決め付けるのも如何なものかと思いますが、今に始まった事ではありません。
「昭和一桁」(昭和一桁生まれ)、「団塊の世代」(1947年-1949年生まれ)、「しらけ世代」(1950年-1957年生まれ)、「新人類」(1958年-1967年生まれ)、「バブル世代」(1966年-1969年生まれ)など、今「ゆとり世代だから」と言っている人もかつては「○○世代だから」と言われていたのです。
「ゆとり世代」も後数年もすれば、かつての流行語になっているかも知れませんね。
[1]週刊ココロコラム
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