頑張る

知人(女性)から愚痴を聞かされました。
3ヶ月程前から会社の部署内のグループリーダーを同僚のAさん(女性)と共に任されました。
リーダーは通常の業務以外に部下の指導や資料のチェック、取りまとめ等で仕事量が凄く増えます。
Aさんと2人で協力しあって頑張ろう、と思っていた矢先にAさんは病気を理由に休職してしまいました。
業務知識のある人が他におらず、結局知人は2人でやる仕事をひとりでやる羽目になったのです。
知人はとにかく真面目で負けず嫌いで完璧主義の頑張り屋ですから、残業手当がなくても毎日残業を続け、時には休日出勤をしたり家に仕事を持ち帰る時もあるそうです。

「でね、Aさん傷病手当をもらう手続きに毎月会社に来ているみたいで、先月偶然廊下で会ったんだけど凄く元気そうでしゃきしゃき歩いてたよ。診断書があるって聞いたけど、だったら何であんなに元気なのかどうしても納得いかない。」
強い口調でこう話す知人に、なんとかなだめるようにこう言いました。
「まぁ、見た目元気そうでも実は重篤な病気の人もいるし、うつとか精神的なものもあるから…」
「あー、ないない。Aさんがうつな訳ないよ。だってあの人いっつも誰かと話しててバカ笑いしてたもん。」
「…あ、そう。でも、」
「こないだ来た時も同僚と笑って話してたし。思わず元気そうですねって言う所だったよ。」
知人の口調は強く、私の言葉を遮ってトゲのある言い方をしていました。
これ以上、助言しても反発するばかりで恐らく無駄だと思い、知人の話に同調するだけにしました。

知人は、他の人が無理だと投げ出す位の仕事量でも、とにかく必死で頑張っています。
それは真面目で頑張り屋だからなのですが、もっと深い部分を鑑みると別の面が出てきます。
「自分の仕事は絶対全部こなさなければいけない」「言われた期限までに絶対資料を提出しなければならない」「余程の病気でない限り絶対仕事を休んではいけない」「社会人が働かずに絶対お金をもらってはいけない」「明るい人は絶対うつ病になるはずがない」
などと言った固定観念をたくさん持っいるのです。
「絶対〜なければいけない」と言う強い思い込みは、本人にとって「絶対」でありそれ以外は全て駄目、つまり自分の固定観念からほんの少しでもずれると「駄目な事」となります。
もし「駄目な事」をしてしまったら、自分が駄目な人になってしまう、それは何が何でも避けなければならない、こういった心の動きが元で、強い義務感を持ち強迫的に頑張っているのです。
このような「頑張る」は、自分が好きで自発的・能動的に行動しているものではありません。
そのため、物理的な肉体的ストレス以上に強い精神的ストレスを受けてしまいます。
知人も心に余裕がなくなり、愚痴でストレスを発散していたのかも知れません。

大好きなゲームをやり続けるのは楽しい事です。
ゲームのクリア出来ない部分に何度も挑みクリアする過程には義務感も強迫観念もありません。
但し、負けず嫌いで他人との競争心があれば別ですが。
ちなみに、負けず嫌いに関しては第198回「負けず嫌い」を参考にして下さい。

頑張るの「頑」は「かたく(な)」とも読みます。
頑なの意味は「意地を張って自分の主張や態度を変えないさま。頑固。」類語は偏屈、強情、片意地、意固地などです。
勤勉さや努力する様は昔から美徳とされていますので、頑張る事や頑張る人は良いと言う風潮があります。
しかし、頑張るという行為の中には、自分の考え・意志(固定観念や思い込み)をどこまでも通そうと我(が)を張ると言う意味も含まれています。

頑張ろう♪と思った時はいいですが、頑張らなくては「いけない」と思ったら、是非頑張らないようにしてみて下さい。
自分が強迫的に頑張らなくても、家族やまわりの人達の協力があればなんとかなるものです。
「頑張る」の理想は、自分が楽しみながら自発的にやっている様子をまわりの人達が見て「あの子、頑張ってるね。」と言われる事かも知れませんね。
[1]週刊ココロコラム
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